顧客(ユーザー)から見たASPのメリット
これは、イニシャルコストが安価である、運用に関わる煩わしさから開放される、常に最新機能を利用できる、といったメリットが考えられる。順に見ていこう。
まず、顧客にとって最も大きいメリットはコストだろう。システムを独自仕様で開発したり、パッケージを新たに購入したりすれば、導入時にかかるコスト(投資額)というのがとても大きくなる。この選択は、ある程度規模が大きくて財務的な余裕がある企業でなければ採ることができないだろう。それに対して、ASPの場合であればイニシャルコストをほとんどかけずに、定期的な利用料を払うことで大規模で高機能なシステムやソフトウェアを導入することができる。
2つ目のメリットは、顧客がシステム運用に関わる煩わしさから開放されることだ。情報システムを保有するということは、その保有期間に亘って、そのお守りをしなければいけないということでもある。ネットワークやサーバなどのインフラ周りのハードウェアを整備して、セキュリティだとかデータの冗長化だとか安全性に気を配らなくてはならない。さらには、当該システムの位置づけによっては365日24時間の監視なども必要になるかもしれない。ASPを利用するのであれば、顧客(ユーザー)が自分でこれらの煩雑な業務を行う必要は無くなる。プロバイダー側が全て一括して代行するからだ。しかも、ユーザーの状況によっては、少ない人員と限られた予算で運用を行うよりは、プロバイダーに任せてしまった方が安全性や信頼性が高まるというケースもあるだろう。
3つ目のメリットは、顧客(ユーザー)が常に最新機能を使うことができるという点だろう。これはサービスや契約の内容によって異なるかもしれないが、ASPであればプロバイダーが追加した新機能をユーザーが直ぐに使うことができるようになる。また、セキュリティやバグにかんするパッチなども、プロバイダ側で常に最新のものを充てることができるというのも長所だ。
提供者側から見たASPビジネスの旨み
これは大きく2つに分けられる。ひとつは、変動費が少ない事業構造ということであり、もうひとつは積上型の事業構造ということである。順に見ていこう。
まず変動費が少ないという点について。これはASPビジネスに限らず、パッケージソフトウェアの開発販売をやっている場合に該当する特徴だ。パッケージソフトウェアのマスタさえ完成してしまえば、販売量がいくら増えようが、その販売を1単位増やすために追加的に必要になるコストというのはほとんどタダみたいなものである。したがって、損益分岐点を越えるまでは大変かもしれないが、一旦それを超えてしまえば売上金額の増分のほとんどが利益になる。そして、売上が増えれば増えるほど、売上高利益率は上昇していく。
このように、パッケージソフトビジネスを手がける企業の場合は、変動費がほとんどかからないので、収益性は総じて高い。これは、SIビジネスとの対比で考えるとわかりやすいだろう。SIビジネスもパッケージソフトと一緒で、究極的には顧客が利用するソフトウェア(あるいはシステム)を提供することが目的である。ここでSIビジネスの場合は、案件ごとにコンサルタント、SE、PGなどを投入して顧客が要求した仕様に添う形で開発が行われる。したがって、案件ごとに毎回、投入した人間の人件費が全て変動費として負担になる。上流工程でよほどの付加価値を示さない限り、顧客への請求単価(多くの場合、人月単位)を上げることができず、なかなか利益を出しにくい。これに対して、パッケージソフトの場合は、基本的に全ての顧客に対して同じプロダクトを提供するので変動費がほとんどかからず、収益性が高くなる。
この変動費がかからないというのはASPに限らず、パッケージソフトビジネス全てに共通する特徴である。では、ASPならではの特徴は何かというと、それはASPが積上型のビジネスであるという点である。パッケージソフトの場合は、ライセンスを売ってしまえばそこで収益ポイントは終わりで、次回の売上が保証されているわけではない。すなわち、売れてしまえばその金額は比較的大きいが、その次に売れなければ売上金額はゼロという、ボラティリティの激しい(ASPに比べればだけど)ビジネスになる。それに対して、ASPの場合は1回1回の売上金額は僅かなものかもしれないけど、それが安定的にずっと続くことが期待できるという点が長所だ。顧客数が少ない間は、売上もたいしたことが無いかもしれないけど、それが増えてくれば段々と巨大な金額が安定的に売上計上されるようになる。しかも、同社のような外食チェーンを顧客としている場合は、既存顧客が成長して店舗が増えれば、その分、同社の売上も積み上がっていくというメリットがある。
以上、5回に亘って書いてきたジャストプランニング社の高収益性の秘密も、一旦、これで終わりにしたい。実は、同社がどのような工夫をすることによって、少数精鋭の体制を具現化できたのかというあたりが分からないままなのだが、残念ながら今のところそれに関する情報が手に入らないので、その部分に迫ることはできない。追加的に何か情報を入手できたら、追加の記事を書くかもしれない。
今回も記事を読んでいただきありがとうございます。ご意見やご感想がありましたら、コメントいただければ幸いです。次回の分析対象企業に関する記事も是非、お読みください。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

