サービス業の最近のブログ記事

今日は、同社の収益源であるASP事業のビジネスモデルについて少し考察してみたい。具体的には、顧客(ユーザー)から見たASPのメリットと、提供者にとってのASP事業の旨みの2つについて考えたい。

顧客(ユーザー)から見たASPのメリット

これは、イニシャルコストが安価である、運用に関わる煩わしさから開放される、常に最新機能を利用できる、といったメリットが考えられる。順に見ていこう。

まず、顧客にとって最も大きいメリットはコストだろう。システムを独自仕様で開発したり、パッケージを新たに購入したりすれば、導入時にかかるコスト(投資額)というのがとても大きくなる。この選択は、ある程度規模が大きくて財務的な余裕がある企業でなければ採ることができないだろう。それに対して、ASPの場合であればイニシャルコストをほとんどかけずに、定期的な利用料を払うことで大規模で高機能なシステムやソフトウェアを導入することができる。

2つ目のメリットは、顧客がシステム運用に関わる煩わしさから開放されることだ。情報システムを保有するということは、その保有期間に亘って、そのお守りをしなければいけないということでもある。ネットワークやサーバなどのインフラ周りのハードウェアを整備して、セキュリティだとかデータの冗長化だとか安全性に気を配らなくてはならない。さらには、当該システムの位置づけによっては365日24時間の監視なども必要になるかもしれない。ASPを利用するのであれば、顧客(ユーザー)が自分でこれらの煩雑な業務を行う必要は無くなる。プロバイダー側が全て一括して代行するからだ。しかも、ユーザーの状況によっては、少ない人員と限られた予算で運用を行うよりは、プロバイダーに任せてしまった方が安全性や信頼性が高まるというケースもあるだろう。

3つ目のメリットは、顧客(ユーザー)が常に最新機能を使うことができるという点だろう。これはサービスや契約の内容によって異なるかもしれないが、ASPであればプロバイダーが追加した新機能をユーザーが直ぐに使うことができるようになる。また、セキュリティやバグにかんするパッチなども、プロバイダ側で常に最新のものを充てることができるというのも長所だ。

提供者側から見たASPビジネスの旨み

これは大きく2つに分けられる。ひとつは、変動費が少ない事業構造ということであり、もうひとつは積上型の事業構造ということである。順に見ていこう。

まず変動費が少ないという点について。これはASPビジネスに限らず、パッケージソフトウェアの開発販売をやっている場合に該当する特徴だ。パッケージソフトウェアのマスタさえ完成してしまえば、販売量がいくら増えようが、その販売を1単位増やすために追加的に必要になるコストというのはほとんどタダみたいなものである。したがって、損益分岐点を越えるまでは大変かもしれないが、一旦それを超えてしまえば売上金額の増分のほとんどが利益になる。そして、売上が増えれば増えるほど、売上高利益率は上昇していく。

このように、パッケージソフトビジネスを手がける企業の場合は、変動費がほとんどかからないので、収益性は総じて高い。これは、SIビジネスとの対比で考えるとわかりやすいだろう。SIビジネスもパッケージソフトと一緒で、究極的には顧客が利用するソフトウェア(あるいはシステム)を提供することが目的である。ここでSIビジネスの場合は、案件ごとにコンサルタント、SE、PGなどを投入して顧客が要求した仕様に添う形で開発が行われる。したがって、案件ごとに毎回、投入した人間の人件費が全て変動費として負担になる。上流工程でよほどの付加価値を示さない限り、顧客への請求単価(多くの場合、人月単位)を上げることができず、なかなか利益を出しにくい。これに対して、パッケージソフトの場合は、基本的に全ての顧客に対して同じプロダクトを提供するので変動費がほとんどかからず、収益性が高くなる。

この変動費がかからないというのはASPに限らず、パッケージソフトビジネス全てに共通する特徴である。では、ASPならではの特徴は何かというと、それはASPが積上型のビジネスであるという点である。パッケージソフトの場合は、ライセンスを売ってしまえばそこで収益ポイントは終わりで、次回の売上が保証されているわけではない。すなわち、売れてしまえばその金額は比較的大きいが、その次に売れなければ売上金額はゼロという、ボラティリティの激しい(ASPに比べればだけど)ビジネスになる。それに対して、ASPの場合は1回1回の売上金額は僅かなものかもしれないけど、それが安定的にずっと続くことが期待できるという点が長所だ。顧客数が少ない間は、売上もたいしたことが無いかもしれないけど、それが増えてくれば段々と巨大な金額が安定的に売上計上されるようになる。しかも、同社のような外食チェーンを顧客としている場合は、既存顧客が成長して店舗が増えれば、その分、同社の売上も積み上がっていくというメリットがある。

以上、5回に亘って書いてきたジャストプランニング社の高収益性の秘密も、一旦、これで終わりにしたい。実は、同社がどのような工夫をすることによって、少数精鋭の体制を具現化できたのかというあたりが分からないままなのだが、残念ながら今のところそれに関する情報が手に入らないので、その部分に迫ることはできない。追加的に何か情報を入手できたら、追加の記事を書くかもしれない。

今回も記事を読んでいただきありがとうございます。ご意見やご感想がありましたら、コメントいただければ幸いです。次回の分析対象企業に関する記事も是非、お読みください。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
今日は事業環境に関する分析を少ししてみたい。

まず、同社がターゲットとしている外食業界全体の市場規模は次のグラフの通りである。全体で30兆円にも達する超巨大産業であるが、典型的な衰退産業でもある。市場全体の成長はピークアウトしており、ここ数年は横ばいまたは減少傾向にある。したがって、同社が成長するためには市場全体と一緒に伸びていくということは期待しにくいので、限られたパイの中で如何にシェアを伸ばしていくかということが重要になってくる。


では、同社の市場における存在感はどんなものなのだろうか?次のグラフは、外食産業における従業員数規模別の企業数および店舗数の分布である。同社の顧客となるのは、チェーンオペレーションを行っている企業の中でも中規模のところである。あまりに小規模であれば、同社のASPを利用する必要が無いかもしれないし、必要でも導入するだけの体力が無いかもしれない。また、大規模な事業者であれば自社固有の仕様で専用のシステムを開発して使うだろう。具体的にどれくらいの規模の企業が想定顧客層か、正確にはわからないが、例えば、かなり広めにとって従業員数50人から2000人までの企業をターゲットとしたとすると、企業数は2,292社、店舗数は25,159店となる。同社の現在の契約顧客数は244社(4,050店舗)だから、同社のシェアは概ね10%から20%間くらいと想定される。想定顧客層をもう少し絞り込んだとすると、シェアは概ね30%未満くらいだろうか。この10%から30%くらいの数値を小さいと見るか、大きいと見るかは難しいところではあるが、まあ、まだ拡大の余地はあるだろう。事業運営次第では、外食産業の中でもまだまだシェアを伸ばしていくことは可能であるわけだ。

ちなみに、同社は外食産業向けの「まかせてネット」の次の柱として、理美容業界向けのASPを開発し拡販していくらしい。これが次の柱に育つのであればなかなか有望でないだろうか。


次に同社(以下、JP社)の競合環境についてみてみると、ユニバーサルソリューションシステムズ株式会社(以下、USS社)という会社が外食産業向けのASPサービスを手がけており、事業領域がかなり被っている。USS社の特徴は、資本的にも人的にもベンチャーリンク系であること、想定顧客層が大規模飲食チェーンであることである。例えば、USS社の売上の2割はレインズインターナショナルとのその関連会社であるコスト・イズに対するもので占められている。

したがって、一応独立系の企業であり、中小規模のチェーンを想定顧客としているJP社とUSS社とはもしかしたら直接は競合しないのかもしれないが、一応、2社の比較をしてみたい。次のグラフは、2社の売上高と利益率を比較したものである。JP社が順調に売上を伸ばしているのに対し、USS社は売上が減少傾向にある。また、前回までの記事で見てきたようにJP社の利益水準がかなり高いのに対し、USS社の利益水準はかなり薄い。というか、直近2年間はUSS社は大きな赤字を計上している。


この収益性の違いがどこから出てくるのかというと、おそらく1つは生産性の違いだろう。次のグラフは、2社の1人当たり売上高を比較したものである。JP社が僅かずつではあるが着実に生産性を改善しているのに対し、USS社は生産性を着実に悪化させてきている。おそらく、USS社はレインズなどのベンチャーリンク系の大口顧客を抱えることで効率のよい事業運営を行っていたものと推測される。それが、レインズの業績不振やMBO(正確にはレインズの親会社のレックスだけど)によるベンチャーリンクとの資本関係の断絶などにより、USS社の売上を低下させてきたのだろう。そして、それを補うための新規事業や新システムを立ち上げようとしたら人が増えて生産性が悪化してしまったのだろう。逆に言うと、もともと効率のあまり良くない中堅企業を狙ってビジネスをしていたにもかかわらず、高い生産性を実現していたJP社が優れているのだろう。

では、JP社のその優れた生産性を実現している要因はどこにあるのだろうか。企業理念や各種IR資料にて会社から発せられているメッセージを読むと、JP社が「少数精鋭」ということにこだわっている様子が垣間見れるのだが、では、具体的にどうやってそれを実現しているのか、という点は残念ながら不明である。


明日に少しだけ続きます。
今日は財務数値をBS, PL, CFの順に見ていく。

まず、BSの資産の部から。事業の半分がASPでもう半分がSIなのだから、資産はあまりいらないだろうなと推測できるのだが、予想通り事業用資産はほとんど無いようだ。総資産の半分以上が現金預金で占められている。また、余剰資金の一部は投資有価証券となっているようだ。


次にBSの負債の部を見てみる。やはり事業用負債がほとんど無くて、仕入債務は僅かな金額である。有利子負債も無いので、調達サイドのほとんどが自己資本によるものである。直近では純資産比率が94%にも達する。ちなみに、18年1月期に目立つ「その他固定負債」というのは繰延税金負債で、要するに余剰資金の運用に充てられている投資有価証券の含み益に対応する部分である。また、直近2年間で「資本金・資本準備金」という払込資本に当たる金額が減っているが、これはグラフ上で自己株式を払込資本から控除して表示しているためである。同社は、さすがに有り余る余剰資金を自己株式の取得という形で株主への還元に充てているようである。

ちなみに、株主への還元方法としては自己株式の取得という方法の他に、配当金の支払という方法もある。どちらが好ましいかというのは、企業のおかれた状況や株主個々の事情によって異なるだろう。個人的には、配当の場合には所得税が課税されることを考えると、自己株取得の方が望ましいのではないかと思う。ただ、投資家によってはキャピタルゲインではなくてインカムゲインが欲しいという事情の人もいるだろうから、一概にどちらがいいとは決まらない。


次に損益計算書の推移を見てみる。利益成長のペースが少し落ちてきているが、売上高が順調に推移していること、利益率がかなり高い水準にあることが読み取れる。営業利益や経常利益が約40%という高水準にある。


各段階の利益率の推移をグラフにしたのが下記だ。ペースは穏やかだが着実に、各利益率が上昇傾向にあることが読み取れる。また、各折れ線グラフの軌跡は基本的に相似形であり、売上高総利益率(粗利率)の改善が、その他の各段階利益率の改善に繋がっていることがわかる。同社の利益はほとんどASP事業によるものであるから、おそらくASPの収益性が増してきているのだろう。


次にCF計算書を見てみる。営業CFは、基本的に、毎期PLの純利益額を稼いだ分だけ営業CFも稼いでいる。売掛金や棚卸資産といった事業用資産があまりないので、利益がそのままCFに繋がっている。直近期である20年1月期で営業CFが急減しているが、これは法人税の支払い金額が急増していることが要因のひとつだ。その前の期である19年1月期に投資有価証券を売却して3億円超の売却益を計上していて、それに課税されているのだ。

投資CFについては、本業とはあまり関係がなくて、余剰資金で投資有価証券を購入したり、それを売却したりしている。

財務CFについては、基本的に営業CFが潤沢で設備投資が必要無い事業構造なので、資金調達の必要性もあまりない状況にある。JASDAQに上場した13年1月期と翌期に公募増資と第三者割当増資で資金調達をしていて、直近の19年1月期と20年1月期には自己株式の取得という形で有り余る資金を株主に還元している。


以上、財務諸表を眺めてみて改めてわかったことは、設備投資も事業用資産もほとんど使わずに利益とキャッシュを稼ぎまくる超高収益体質の事業構造だ。次回、この超高収益事業構造の秘密に少しだけ迫りたい。

続きます。
今日の記事ではいつものようにROEについての分析をする。今までも述べているように、この企業分析シリーズの分析対象企業は、過去安定的に高いROEを達成している企業を「優良企業」と定義している。また、過剰負債や過小資本により、いわゆるハイレバレッジな財務状況で高いROEを達成しているようなケースは「優良」とは言えないと判断している。

そして、この企業分析シリーズの目標は、その企業を優良企業たらしめている本質的な要因はいったい何であるのか?その核心に少しでも迫ることである。

さて、ROEのグラフから。下記のグラフを見てわかるように、ROEが年々向上していて、直近では約25%にも達している。ちなみに、青い線が個別財務諸表を、赤い線が連結財務諸表をベースに計算した数値である。個別と連結の差はほとんどない。


次に売上高利益率の推移を見てみる。これも右肩上がりで上昇を続けている。ROEが向上を続けている主な要因はここにあるのだろう。直近では売上高利益率は20%を超えるような水準にあり、税引後の利益率がこの水準にあるというのは素晴らしい。


次に総資産回転率を見てみる。概ね、1倍未満の水準で推移をしている。特に回転率が高いとは言えない状況だ。ちなみに、直近2年間で、この回転率が続けて改善しているがこれは次回の記事で少し触れるが自己株式の取得によるものである。


次に財務レバレッジの推移を見てみる。概ね1倍から1.4倍の間で推移していてレバレッジがほとんどかかっていない。直近では純資産比率が90%を超えるような水準にあり、これ以上さがりようがないところまでレバレッジが下がっている。


以上のように、総資産回転率と財務レバレッジはかなり低い水準で推移しているので、同社の高いROEはその売上高利益率の高さによって実現されていることがわかる。で、前回の記事に書いたように同社の利益のほとんどはASP事業によってもたらされていることがわかる。営業利益率65%というASP事業の高収益性がいったい何によってもたらされているのか、そのあたりが同社分析の鍵である。

次回に続きます。
今回採り上げる企業は、株式会社ジャストプランニング(JASDAQ 証券コード4287)です。

同社の事業は、ホームページの会社概要から引用すると次のとおりである。

外食業界におけるコンピュータシステムの開発及び販売。 店舗システム・本部システムに関するコンサルティングシステム導入及び運用支援。 上記業務に関する各種消耗品の販売。

有価証券報告書の「事業の内容」によれば次の3つである。

  • ASP事業
  • システムソリューション事業
  • 店舗支援ファンド事業
事業別の売上高の内訳を見てみると、ASP事業とシステムソリューション事業がちょうど半々くらいで、この2つで会社の売上のほとんどを占めていることがわかる。


次に事業別の営業利益を見てみると、一目瞭然、同社の利益のほとんど全てをASP事業で稼いでいることがわかる。


ところで、本論とは関係ないのだが上記のグラフが3年分の推移しかないことが気にならないだろうか。企業分析シリーズの分析対象企業を選定するに当たっては、上場から一定程度の年数が経過しており実績があり、経年データを分析できる企業を選んでいる。今回のジャストプランニング社がJASDAQに上場したのは2001年7月だから、目論見書まで遡れば少なくとも9年分くらいの経年比較ができる。

なのに何故3年分しか載せていないかというと、同社の連結財務諸表が公表されているのが直近3年のみだからだ。じゃあ、個別財務諸表を使って過去からの推移を分析すればいいのかというとそう言うわけにはいかない。個別財務諸表しか作成していない会社はセグメント情報を開示する必要がなかったり、連結情報を開示するようになるとそれまで開示していた個別ベースでの売上高の内訳とかキャッシュフロー計算書だとかが連結ベースでのみ開示されるようになり、個別ベースの情報が手に入らなくなるのだ。こういった事情で、日本の制度会計の下では分析の連続性を確保できないケースが出てくる。企業側の開示業務の効率化を意図しているのだろうが、財務諸表の読み手、すなわち利用者側が不便になっては意味がないと思うのだが。。まあ、愚痴です。

で、本題に戻るとこのASP事業とはなんだろうかというと、外食産業に特化した業務システムをASPで提供しているらしい。同社の主力製品は、まかせてネットという統合型店舗管理システムであり、その守備範囲は売上管理、仕入管理、勤怠管理の3分野にわたる。

もともと同社の現会長が94年3月に同社を設立したころは、POSシステムを外食産業向けに販売していたらしい。しかし、POSのような高価なシステムを導入できるのは、他店舗展開をしておりある程度の規模がある企業でしかできない。中小規模の外食チェーンにもPOSを活用した計数管理を導入し、業績を伸ばしてほしいという問題意識のもとで始まったのがASP事業ということらしい。同社のコンセプトは、中小規模外食チェーンのシステム部門の役割をアウトソースで請けるというものだ。

ちなみに現社長である鈴木氏は、もともとは同社(ジャストプランニング)の外注先の開発会社で、まかせてネットの開発に当たっていた人らしい。そんな鈴木氏を現会長が口説き落として合流したということのようだ。

なかなか興味深い企業で続きを調べたり書いたりするのが楽しみですが、今日はこの辺で終わります。
今日は市場環境の分析を少ししてみたい。

市場規模のデータとかを入手するには、MDBに行って、矢野研究所とか富士経済とかのレポートを見たりすると早かったりするのだけれど、当然、有料だ。今日は、公的機関がネットで公開している情報、もちろん無料、から数字を拾ってみたい。

まず、学習塾業界の規模について、これは総務省が実施しているサービス業基本調査から情報を入手できる。平成16年版の調査によればの学習塾の収入額(市場規模)は1兆4,111億円、事業所数は4万9千ヶ所従業者数は279千人となっている。これはおそらく、予備校とかいろいろ含んでいるのだろうけれど、かなり規模が大きいことがわかる。

しかし、市場の絶対額がそこそこ大きいとしても、少子化による市場の縮小が気になるところである。国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料をみると過去の世代別人口の推移がわかる。やはり、子どもの人数は減少してきているようだ。


しかも、この傾向は将来も続くらしい。同研究所の将来推計人口データベースによると、今後、短い期間に子どもの人口はどんどんと減っていくことがわかる。こうしてみてくると、学習塾業界の先行きは暗いような気がしてくる。


一方で、上場学習塾企業とかが主張しているのは、ゆとり教育に伴う学力低下不安や私立校の受験ブームにより、学習塾への出費が増えているという点だ。文部科学省による「子どもの学習費調査」をみると、その主張を一部裏付けるデータがある。下記のグラフは子ども1人あたりの年間学習塾支出の年度推移である。公立中学校に通う子どもや私立高校に通う子どもの学習塾支出が年々増加傾向にあることがわかる。今までは、この1人当たり支出の増加が、人口減少の影響を一部打ち消す効果があったものと推測される。ただ、1人あたり支出には当然のことながら限界があるから、金額ベースで見た市場規模が目に見えて縮小し始めるのはそう遠いことではないだろう。


市場規模が縮小傾向にあるとすると、競合環境はどうなのかというところが気になってくる。ここで、natoityがクリップコーポレーションの分析で調べた上場学習塾の比較表をみてみる。すると、明光ネットワークジャパンの売上高は12社中8位、純利益は12社中1位である。企業単体としての売上高規模は上位企業には敵わないが、フランチャイズ先の売上高を含めて他社と比較してみれば、相当に上位にくるものと推測される。個別指導という形でマーケットを絞り込んでいるものの、市場全体の兆を超える規模から見れば、同社の売上高はまだまだ小さく、零細規模の事業者を淘汰しながら今後も同社が伸びていく余地はあるだろう。

分析の詰めが甘く、かなりの不完全燃焼感が残りますが、明光ネットワークジャパンの分析記事は今回で終わりにします。追加情報が入手できた際には補足記事を書くかもしれません。

(追記)
同社のIRから入手できた情報が若干。

同社が展開する明光義塾の特色はなんといっても個別指導という点にある。では、個別指導塾としての他社と比較した特色はというと、授業料がリーズナブルな点にある。例えば、つい最近まで同社の大株主だった東京個別指導学院(TSG)と比べると、同社の生徒1人当たりねんかん授業料が約40万円なのに対して、TSGの場合は約70万円である。この数字は、両者が公表している売上高と生徒数の数字から電卓で簡単に導くことができる。年間40万円にしても70万円にしても、客単価としてはかなりいい値段だと思うが、他よりも4割安い授業料で個別指導が受けられるというのは、保護者にとっては魅力的だろう。

このリーズナブルな授業料をどのように実現しているかといえば、オペレーションコストの節約によるものらしい。例えば、TSGでは生徒2人に対して先生1人を充てているところ、同社の明光義塾では生徒3人に対して先生が1人であるとのこと。また、明光義塾では立地や内装を簡素なものとすることにより、新規出店コスト(設備投資)を抑えているらしい。1教室あたりの設備投資はTSGと比べて半分の水準なのだそうだ。このように、オペレーションコストの節約により授業料を抑え、高価になりがちな個別指導という商品を普及型にしているとのことであった。

この普及型でリスクが少ない運営形態というのが、フランチャイズ本部としての強みでもあるらしい。つまり、フランチャイズの加盟者からみれば、少ない資金でリスクを抑えた形でビジネスをはじめることができるというのが魅力らしい。そして、現在、新規に開設されるフランチャイズ教室の多くは、新規加盟者ではなく、既存のFCオーナーが2教室目、3教室目という形で他店舗展開をはかるものが多いとのことである。それだけ、FCオーナーにとって魅力的なシステムなのだろう。IR担当者は、「FCオーナーとの共存共栄を目指すようなやり方」という言い方をしていたが、新規出店のリスクの低さのほかにもおそらくは、FCオーナーにとっての魅力的な仕組みというのがいくつか存在するのだろう。さすがに電話での問い合わせに対しては、あまり詳しく教えてくれなかったけど。

追記情報は以上です。
今日も財務数値を見る。BS, PL, CFを順に見ていく。

まずはBSの資産の部から。昨日の記事で書いたように同社の売上の半分は学習塾事業で、もう半分はそのフランチャイズ事業なのだから、あまり資産は要らないだろうなという推測ができるのだが、実際、同社のBSに事業用資産はあまり載っていない。同社の資産の過半が、現金預金と投資有価証券、投資不動産等の投資で占められている。要するに稼いで溜め込んだお金を社内に留保していて、それがキャッシュのままになっているか、運用に回っている状態にある。


次に負債の部、純資産の部を見てみる。毎期、留保利益が積みあがり続けていて、純資産比率はかなり高い水準にある。負債の中身を見てみると、まず、仕入債務の残高がほとんどないことがわかる。事業内容が学習塾とかフランチャイズなので仕入債務はほとんど発生しないということでしょう。そして流動負債のなかで最も残高が大きい項目が未払法人税等である。それだけ儲かっているということだ。

それから、直近期(といっても1年近く前になるけど)になって新たに現れたのが長期借入金だ。15億円ほどの残高がある。昨日の記事にも書いたが、約50億円ものキャッシュを持っていて、さらに約35億円ものお金を有価証券とか不動産とか定期預金で運用している会社が借り入れを起こす意味はどこにあるのだろうか。昔、あるアナリストの人が冗談で実質無借金会社の借入金の金利は、PL上、支払利息ではなくて交際費として計上すべきだ、と言っていたのを思い出した。


次にPLを見てみる。売上の成長ペースが少し落ち着いてきているが、一応、直近期でも増収を達成している。また、利益の水準がかなり高いことが読み取れる。


各段階の利益率の推移をグラフにしたのが下記だ。ペースは穏やかだが着実に、各利益率が上昇を続けていることが読み取れる。また、各折れ線グラフの軌跡は基本的に相似形であり、売上高総利益率(粗利率)の改善が、その他の各段階利益率の改善に繋がっていることがわかる。これは、昨日も書いたように、フランチャイズ事業の相対的な重要性が増している結果だと推測される。


次にCF計算書を見てみる。基本的に、毎期PLの純利益額とほぼ同じくらいの営業CFを稼いでいる、というだけのシンプルなCF計算書だ。年度によっては、投資CFの棒グラフが下の方まで伸びていたりするが、中身をみてみると投資有価証券の取得だったり、定期預金の増加だったり運用関係の支出なので、本業とはあまり関係がない。また、財務CFも、キャッシュ・リッチな同社には基本的には関係がない。直近期でよくわからない借り入れを起こしているのは上述したとおり。


以上、無理やりまとめると、フランチャイズ事業の比重が増すにつれて収益性も増してきている。儲けたお金のかなりの部分は剰余金として社内に留保され、本業では資産があまり必要ないため、あまった資金は現預金のまま寝かされているか、有価証券や不動産、定期預金の形で運用されている。要するに、とってもお金持ちな会社だ。

明日に続きます。
財務数値を見る前に、昨日の記事で書き忘れた点をひとつ。同社は、正確には学習塾の運営会社ではなくて学習塾という商材を扱っているフランチャイズ本部であることは、昨日の記事で触れたとおりである。このことを数字の面から改めて確認してみたい。まず、同社の売上構成の中身を見てみると下記のグラフのようになる。濃い水色で示した学習塾直営事業と、薄い水色で示した学習塾フランチャイズ事業の売上がちょうど同じくらいで、同社の売上を2分していることがわかる。ここ3、4年は、直営事業の売上がほぼフラットで推移して、フランチャイズ事業の売上が若干の成長傾向にあることがわかる。


直営事業の場合は最終顧客から受け取る授業料が全て売上に計上されるが、フランチャイズ事業の場合は受取ロイヤリティとか教材とかの代金とかのみが売上になる。つまり、フランチャイズ事業の売上は、末端売上高からみればごく一部分のみが本部の売上高として計上されることになる。このようにグロス金額ではなくて、ネットの取り分のみが計上されるフランチャイズ事業の売上高が全体の半分を占めているのだから、末端(グロス)の売上高はフランチャイズ事業の方がずいぶんと大きくなっていることだろう。

次のグラフは、学習塾の教室数の推移である。紺色の棒グラフがフランチャイズ教室数の推移であり、オレンジの棒グラフは直営教室数の推移である。ひと目見てわかるように、直営教室数の占める割合はとても少ないうえに、ここ何年もその数をほとんど増やしていない。それに対して、フランチャイズ教室の割合はとても多いし、毎年毎年その数を増やし続けている。これは、明らかに会社として、フランチャイズ事業に力を入れているということなのだろう。


さて、話題は変わって財務数値。過去の記事で何回か述べているように、この企業分析シリーズで採り上げているのは、隠れた優良企業である。で、何を以って「優良」と定義づけているかというと、基本的に過去5年間のROEが20%以上の水準で安定的に推移していることを第一の条件としている。ただし、負債を極度に増やしていたり、純資産が極度に薄いような場合には、いわゆるレバレッジが効いた状態になることから、結果的にROEが高くなってしまうことがある。そういうハイレバレッジな状態で高いROEを示している会社が優良企業といえるかという点について、必ずしも憂慮企業とは言えないと僕らは判断をしており、したがって2次スクリーニングとして純資産比率が高く、レバレッジがあまり効いていない会社を選んだ。

で、まず同社のROEの推移が下記のグラフである。今から、9年くらい前の平成11年8月期まではROEが11%くらいしかなかったのが、その後数年間でぐんぐんとその数値を向上させている。そのあと、若干の落ち込みを見せているものの、20%前後の高い水準で推移していることがわかる。


次に、ROEの構成要素を順に見ていくと、売上高利益率がきれいに右肩上がりの軌跡を描いている。毎年、利益率が改善し続けているというのは素晴らしい。推測だが、これはフランチャイズ事業の売上構成比が上昇していることが要因のひとつだろう。相関係数を計算してみたら、0.66だった。強くはないが、関連があるとは言えそうだ。


次に総資産回転率を見てみる。平成15年8月期をピークに山型の軌跡を描いている。これは、売上高の成長ペースを上回るペースで総資産が増えてしまっていることを意味している。次回とかでもう少し詳しく触れるが、同社の場合、利益として稼いだお金が現金預金とか投資有価証券という形で企業内に留保されていているので、総資産が膨らみがちなところが、この総資産回転率が近年悪化している要因と思われる。


最後は、財務レバレッジの推移。これも、総資産回転率と同じで基本的に山型の軌跡だ。稼いだ利益を剰余金として溜め込んで純資産の水準が上昇し続けているのだから、レバレッジが低下しているわけだ。ただ、直近年度の19年8月期では、このレバレッジの低下に歯止めがかかっている。BSを見ればわかるのだが、この期の決算で、これまでは無かった有利子負債が計上されている。ここで不思議なのは、なぜ借入を行っているのかという理由、あるいは事情である。現金預金を約50億円も保有していて、その他に有価証券を約25億円も保有している会社が、15億円の借入を行う理由がよくわからない。


明日に続きます。
この企業分析シリーズは、パートナー3人で分担して書いていますが、早くも2周目に突入しました。今回採り上げる企業は、株式会社明光ネットワークジャパン(東証1部、証券コード4668)です。

明光ネットワークジャパンは、2週前に採り上げたクリップコーポレーションと同じ業界、学習塾業界の企業だ。僕は、natoityと違って学習塾業界に特に強い興味を持っているわけではないので、分析に当たっての土地勘がいまいち働かない。とりあえず、基礎的な情報を片っ端からリストアップして頭の中に放り込んでいく。

同社の事業内容は3つ。

  • 個別指導塾(明光義塾)の経営と経営指導
  • 学習教材及び出版物の製作と販売
  • 小中学生を中心としたサッカースクール事業

そういえば、サッカースクールの運営ってクリップコーポレーションもやっていた。学習塾とサッカースクールの組み合わせって、シナジーでもあるのだろうか?個人的には、少年サッカーチームというものは地域コミュニティの中で営まれるものだという先入観を持っていたので、企業、しかも上場企業がサッカースクールを運営しているというのには、少し違和感を覚える。サッカー云々というのは、多分、本論ではないから、この辺で止めておく。

同社の設立は1984年9月。今から24年前だ。ものすごい老舗企業というわけではないけれど、最近できたばかりの新興企業というわけでもない。なんとも中途半端な感じだ。

本社所在地は東京都池袋。池袋西口の繁華街を抜けたあたりだろうか。あのあたりの地理には詳しくないのでよくわからないけど。場所は便利そうだ。

決算期は8月。ちょっと変わっている

直近年度の売上高は103億円、営業利益は26億円。収益性は高そうな雰囲気だ。

大株主一覧を見てみると、創業役員達と、おそらくその誰かの資産管理会社と思われる会社などが名を連ねている。東証一部とは言っても、オーナー色の強い企業のようだ。そして、去年(2007年)の10月に岡山のベネッセが約14%の株式を取得して、大量保有報告書をファイリングしている。保有目的は「純投資」と開示されている。この大株主と、本当はどういう関係にあるのか興味深いところだ。

役員一覧を見てみる。各役員の経歴を眺めてみるが、特定の色だとか系統的な特徴は認められない。如いて言うならば、同社の主要役員の人たちは、同社成長の立役者であるということが最大のアイデンティティだろう。すなわち、たたき上げの人たちだ。「○○○○の出身」という形で過去に在籍していた会社名で人々に認知されるよりも、「××××の発展に尽くしたひと」という形で現在在籍している会社名で認知された方が、本当はかっこいいのかもしれない。

最新の教室数は1,663。あれ。なんか多すぎる気がする。売上高が103億円だから、1教室あたりの売上を計算すると・・・。なんか数字が小さい。そんな非効率的なビジネスをチマチマと積み上げているのだろうか?すこし調べてみると、この教室数1,663のうちほとんどはフランチャイズであり、直営ではないことがわかった。だから、教室数のわりには、売上高のきぼがちいさいようだ。この会社の本質は、学習塾の運営会社というよりも、学習塾という商材を利用したフランチャイズ本部なのだ。

というわけで、会社の本質が見えてくると、会社が掲げている企業理念の中身もなんとなく理解できるようになってくる。

  • 経営理念
    • 教育・文化事業への貢献を通じて人づくりを目指す
    • フランチャイズノウハウの開発普及を通じて自己実現を支援する
  • 基本方針
    • 教育・文化事業への貢献を通じて顧客・株主・社員の三位一体の繁栄を目指す
  • 教育理念
    • 自立学習
    • 個別指導

同社にとって顧客とは、学習塾に通う子供たちやその保護者たちだけではなくて、フランチャイズオーナーの人たちも含むということだろう。そして、同社およびそのフランチャイジーが展開する明光義塾の特徴は、個別指導というところにあるようだ。

概要情報をチェックして会社の輪郭がぼんやりと見えてきたあたりで今日の分析は終わりにしたい。明日は数字を見てみます。

さて、本日がクリップコーポレーションの企業分析最終日となった。

その前に8月14日付の日本経済新聞の投資・財務欄に新規公開株の横顔という記事があり、そこには成学社という関西地盤の学習塾がJASDAQ市場に間もなく上場するようである。

「開成教育セミナー」とフィールドワーク作業中によく目にすることが多かったのだが、記事によると大阪府など関西に約200教室を展開しているという。上場による資金調達の約1億5千万円の半分ほどは新教室の開設に充てるそうだ。

直近年(2008年5月期)の売上高は53億円、経常利益4億円だとある。

有価証券届出書を見ると、この会社の事業の種類別セグメントには教育事業のほかに不動産事業と飲食事業があるようだ。
そういえば、クリップコーポレーションのその他の事業セグメントでも飲食事業があったが、教育事業と通ずるものがあるのだろうか。

クリップコーポレーションの分析が終わったら、成学社とアップの企業分析をしてみようか。

さて、本題にもどり、収益性・生産性・安全性・成長性の分析の総括すると下記の通り。

【収益性の分析】では、クリップコーポレーションの事業の二本柱である教育事業とスポーツ事業の収益性を、そしてとりわけスポーツ事業の高い収益性が確認できた。

【生産性の分析】では、単体データのみの分析となったが、上記収益性のひとつの要因となる、クリップコーポレーションの労働分配率の低さを確認することができた。

【安全性の分析】では、クリップコーポレーションの財務構造の観点からは健全な状況であることを確認した。

【成長性の分析】では、今までの急成長はスポーツ事業により牽引されてきたこと、そして教育事業ではM&Aによる増益効果も確認された。ただし、将来の成長ということでは明確なビジョンが確認できなかったが。

クリップコーポレーションは経営目標として毎期自己資本利益率20%以上の達成を掲げているが、それを現在まで達成してきているのは、次のような要件が満たされていることからだろうか。

①学習塾の教育事業から、より高い収益性をもつスポーツ事業を開拓できたこと。
②教育事業及びスポーツ事業において、均質なサービスを提供できる仕組みを構築していること
③教室ごとの収支管理と原価管理を徹底していること
④新設・撤退基準の明確化であること

有価証券報告書や決算短信の定性的情報(経営戦略)を読んでのあくまでの想定である。この会社の優良さを裏付けるような管理資料(収支管理・原価管理)を拝見してみたいと思うが。

さて、総合的に分析した結果、クリップコーポレーションの優良さというのが見えたが、市場の評価はどうかと、Yahoo Financeで見てみる。

株価収益率(PER)        5.42倍
株価純資産倍率(PBR)     0.91倍
時価総額          3,493百万円 

であり、現状市場の評価は低いようだ。

では上記の情報を時系列で見てみよう。





直近年を除く数年は市場の評価も今よりも高かったようだ。

現在の市場の評価の低さの要因は、現今の株式市場の低迷が大きな要因であろうが、もうひとつはクリップコーポレーションの将来の成長性のビジョンが明確に見えないところにもありそうである。

クリップコーポーレーションが今後どこに経営資源を投入するのか、そのビジョンが明確になり、成長性が見えた時、この会社の市場の評価は再度上がるかあるいはその優良さを発見する可能性は高いと思われる。

以上で、企業分析シリーズ第2弾、クリップコーポレーションのレポートは終了である。優良企業を優良企業たらしめている本質的な要因に迫ることは公開されている情報では不十分であり、実際企業の方にお会いしてお話をお聞きしたいと思うことも多々あった。ただ、【企業分析】イハラサイエンス(4)の最後にも記載してあるとおり、有価証券報告書等の公開情報を手がかりにしながら、企業経営の本質に少しでも迫ることは興味深く、今後もいろいろな企業を分析する中で、研鑽を続けて行きたい。

皆様の率直なご意見や感想、アドバイスなどいただけましたら幸いです。今後ともよろしくお願い申し上げます。

ブックマークされた記事

カテゴリ

(RSS1.0/RSS2.0/Atom)

この日記のはてなブックマーク数

お問い合わせ

  • お問い合わせは下記のメールアドレスまでお願いいたします。
  •