また悪い頭を働かせまして

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ヒットを生む経験価値創造―感性を揺さぶるものづくり』(日科技連出版社)の第7章では京都の「一澤帆布(現在は一澤信三郎帆布)」が取り上げらている。

顧客ニーズのフィードバックとして一澤の社長のコメントがあり、一澤帆布(一澤信三郎帆布)ではどのように顧客ニーズをくみ取り、フィードバックしているかがよくわかるのだ。

(原型の現物を手に取りながら)これは牛乳の配達袋で、ちょうど牛乳瓶が20本入るんです。昔、自転車のハンドルにぶら下げて配達していたので、いろいろ工夫がしてあります。そこに穴があいているのは、水分とか、あるいは瓶が割れたときに、ここから抜けるようになってるんです。これを自転車に掛けて配達すると、どうしても、この部分が自転車と当たって傷みやすいんです。それで、ここが二重にしてあるんです。同時に、こういうふうに、たすきに縫って、穴が空いても広がらないようにしてあるんです。今でもたまに牛乳屋さんが配達袋を買いに来てくれます。

まだまだ、一澤社長の話が続くが、面白いのでそのまま引用。

こうしたら、一般のお客さんが、そのかばんを面白いなということになって、風呂桶入れてこれで風呂に行くとか、あるいは、野菜やらを入れる買い物袋に分けてくれというような人が現れてきました。こんなもの、何が面白いのかと思ってたんだけど、あ、そうか、そういう見方もあるんだな、と気づきました。それじゃあ、別に自転車に掛けるわけじゃないんだから、これを当て布ではなしに、ポケットにしたらどうだということになって、これ、ポケットに変わるんです。

情報発信したことに対する意味付けはお客がしてくれる。その意味付けを情報に加味していく作業を通じて、だれにもまねできない"強み"ができ、それがブランドになっていくのだろう。

話が面白いので、まだまだ『ヒットを生む経験価値創造』から引用しよう。

しかも、底に穴を開けておく必要がないんで、それで、こういう形(進化①)で売ってました。すると、お客さんが、このロープだと汚れてるし、手が痛いって言いだしまして、それだったらまたー工夫しないといけないなということになって、持ち手を共のきれいにしたらこういうふう(進化②)になったんです。
店に並べておくと、結構売れだしました。すると、東京辺りのお客さんが、これ、いいけど、通勤電車に乗ってたら、底が広過ぎて人にぶつかるし、上からのぞかれて、物も取られたりする心配もあるので、というような話になって、そうしたらまた考えないといけないなと、また悪い頭を働かせまして。


底は、こういうふうに楕円にして、深さをもう少し深くして、内側に貴重品入れを付けて、口も紐でくくれるようにしたんです。そうしたら、これ(進化③)が今、定番になってまして、次にお客さんが何を言ってくるか、楽しみにしているんです。

ピーター・ドラッカー著『プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))』(ダイヤモンド社)に"強みを知る方法"が記載されている。

その方法は、それは何かをすることに決めたならば、何を期待するかをただちに書きとめておき、期待と実際の結果を照合するというフィードバック分析しかないと書かれている。

一澤社長のコメントを読んでいて、このフィードバック分析のことを思い出したのである。

すぐに強みを得れるのではなく、強みを知るのは地道かつ継続的なフィードバック分析でしか勝ちえないものであろうと最近よく思う。

一澤社長の話を続けよう。

目の届く範囲の仕事をしているのが一番間違いなく、確かだと思います。今、情報化時代というようなことが言われているんですけど、直接、使い手というか、お客さんと対面して商売していますから、ある意味では一番身近で、濃い情報が入っているのかなという気はしてるんです。

濃い情報を求めよう。そこには多くのヒントが秘められているのだから。

            

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