神戸にあるクライアントの行き帰りに、そのクライアントの創始者の本を読んでいる。
三宮に行く方法は何通りかあるのだが、一人で行く場合は別のクライアントの交通手段を使うようにしている。行きと帰りで別の鉄道に乗る訳であるが、ふと今は両鉄道とも同じ会社になっているため、使い分ける意味がないかと思いつつ。
さて、創始者の本の話に戻ろう。今読んでいる二つの本の両方に『キリモミ商法』という経営手法が記載されている。
それを読んでいて思ったのが、"マーケットイン"という言葉である。
あかつき財務戦略研究所@MBCSの『プロダクトアウトとマーケットイン』の記事で引用されている"マーケットイン"の定義では次の通りである。
企業が商品開発・生産・販売活動を行う上で、商品・サービスの購買者のニーズ優先し、ユーザー視点で商品開発を行い、ユーザーが求めているものを求めている数量だけ提供していこうという経営姿勢。"売れるものだけを作り提供する方法"といえる。
創始者は、戦後自暴自棄になる青少年を見ていて、「青少年のためにスポーツシューズを作ること」を人生の目的としたされた。靴づくりを長田区の会社で習得し、一番スポーツシューズで難しいバスケットシューズに取り組まれたという。
作成したバスケットシューズの試作品をもって、問屋へ行ったら総スカン。
その総スカンから創始者は、バスケットシューズを履くのは問屋ではなく、バスケット選手であることから、選手に履いてもらおうと転換された。
選手に履いてもらったら、いくつもの課題が浮き彫りになる。創始者が行ったのは次の通り。
なんとかお願いして、午後三時からの練習に参加して、部員が練習する横でボール拾いをしながら、選手のフットワークを研究することを許されました。それから、毎日通って、選手の動きとシューズの様子を自分の目で見て、頭の中に叩き込んでいきました。そして、練習のあとで選手ごとに今のシューズのどこが問題かを尋ね、記録していったのです。その間にも、いくつか試作品を作り、選手に実際に履いてもらって、感想を聞く努力を重ねて行きました。(念じ、祈り、貫く―求める心が成功を導く (なにわ塾叢書))
そして新たな課題が見つかる。試作する。その地道な繰り返しを行う。この作業は株式会社一澤信三郎帆布の社長の言葉と通じるものがある。(投稿記事『また悪い頭を働かせまして』を参照ください。)
この繰り返しから,勝ち取った経営手法が「キリモミ商法」だという。
常に頭の中に問題意識を持ち、製品に改良を加えようとしていると、何かのはずみに閃きのようにアイデアが浮かんでくる。タコを入れたキュウリの酢の物が吸盤型のバスケットシューズに、そして、たまたま乗ったタクシーが急停車したことが、タイヤの原理を応用したバスケットシューズの完成に結びついたわけだ。このように一つのことで次々にイノベーションを起こして、新しい製品を作っていく方法から、私は「キリモミ商法」という独自の経営手法を体得した。( )
聞いて、試す。この繰り返しにより、作り上げたブランドのようだ。
いうまでもなく中小企業には力がない。大企業の真似をしていてもしかたがない。そこで、ここはというところで、その一点を集中的に攻撃する。ちょうど錐で揉むように穴を開けていくわけだ。どれほど硬いものでも、鉄板でも、金槌で叩いただけでは穴は開かないが、錐でやれば小さいが穴が開く。いったん穴が開くと、あとはそれを広げていくのはたやすい。このような手法こそが中小企業のマーケティングに適している。
バスケットシューズで揺るがぬポジションを確立し、そしてマラソンシューズへと展開していく。
本には、マラソンシューズでメーカーの製品を一躍ブランドへ高める象徴となったシーンが写真として掲載されている。モントリオールオリンピックの1万メートルで金メダルをとったラッセ・ビレン選手が、履いていたメーカーのシューズを高々と掲げたウィニングラン!!
ラッセ・ビレン選手の靴も展示されているかと見たら、現在オリンピック博物館の展示のため貸出し中とあった。残念。
クライアントの方にラッセ・ビレン選手の話をご存知ですかと尋ねると、新入社員の時から、研修始め、耳に蛸ができるぐらい聞いているとのことだ。社員にも創始者の思考が伝承されているようだ。
そう、今のブランドができたのは、耳に蛸ではなく、"靴に蛸"を付けたことから始まったといえる。
マーケットインに迷ったら、"靴に蛸をつけてみよう"を思い出そう。
頂いた優待券でメーカー製品を購入して、愛社精神に馴染んでみよう。
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